離婚したい人も、離婚したくない人も、知ればきっと役に立つ

離婚暦を明かさない事は法律上問題ありますか?

Q.

 2度の離婚を経験していますが、彼には「離婚経験がある」としか話していません。2度目は3ヶ月で離婚し、親戚等も知りませんし、私も相手の母親にしか会っていません。彼は「昔のことは話さなくていい」と言ってくれていますが、2度目の離婚について黙ったまま結婚すれば詐欺になりますか?また、彼との結婚後に分かった場合、離婚や慰謝料発生の原因になりますか?

(30代:女性)

A.

 まず、「詐欺による婚姻」が法律上どのように取り扱われるのかを見てみましょう。
 民法747条は「詐欺又は強迫によって婚姻した者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる」と規定します。したがって、詐欺によって結婚した人は、取消訴訟(人訴2条1号)および審判(家審23条)により婚姻関係の取消しを請求できます。この場合、取消すことができるのは結婚当事者(本件では「彼」がそれに該当します)だけです。また、この取消権は「彼」が追認するか詐欺を発見したときから3ヶ月経過したときには消滅します(民法747条2項)。
 一方、取消期間経過後でも、欺かれたという事実により、当事者間(たとえば、「彼」とあなた)の信頼関係が破綻することも考えられます。その場合、「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)があるものとして、欺かれた側(本件では「彼」)から離婚の訴えを提起されることもありえます。
 さらに、「詐欺」あるいは「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたると判断された場合、欺むかれた側は当該詐欺行為によって自律権(憲法13条)あるいは婚姻をする自由(同24条)を侵害されたと言えます。したがって、欺かれた側が請求をすれば、欺いた側には慰謝料支払義務が発生しうることになります(民法710条同709条)。

 では、2度目の離婚歴を話さないことが「詐欺」や「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するのでしょうか?これについては、異なる価値観を持つ判断者によって、様々な事情を考慮対象に判断が下されます。そのため、担当裁判官や考慮される事情によって結論は異なると思われます。ただ、婚約解消についての事件ではありますが、相手方の調査不十分を理由に婚約解消が認められなかったもの(青森地判S32.8.13)や相手の過去の素行不良を理由とする婚約解消を認めなかったもの(福井地判S32.11.30)があります。これらの判例に照らせば、彼があなたの最初の離婚については了知していること、「昔のことは話さなくていい」と言っていることから、単に2度目の離婚歴を話さなかったということが直ちに「詐欺」(民法747条)や「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条)にはあたると判断される可能性は低いと思われます。ただし、婚姻関係は男女間の信頼を基礎に成立するものです。したがって、結婚後に露見すれば相手が「欺かれた」と考えかもしれない事実については、事前に打ち明け、話し合うことによってお互いの信頼を涵養するのが本来です。積極的に経歴を隠したりする場合はもちろん、単に黙っていただけであっても、これを契機に信頼関係が破壊され、様々な「婚姻を継続しがたい重大な事由」を後に生む場合があるということを付言しておきます。

 なお、詐欺罪(刑法246条)の一類型として、「結婚詐欺」という言葉が一般的に使われます。しかし、刑法にいう詐欺とは財物騙取を目的とするものであり、単に「結婚する」という意思表示を引き出すために行われた欺罔行為はこれに該当しません。


更新 2007年10月23日
      

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