離婚したい人も、離婚したくない人も、知ればきっと役に立つ

支払われなかった期間を遡って養育費を請求できる?

Q.

 私には、息子が一人います。離婚の際に息子を私が引き取ることにし、養育費を請求したのですが、子供との面接権を拒否したら、「会わせてもらえないなら払わない」と言われ、そのままになってしまいました。子供も大きくなり、教育費もかかるため、離婚から9年が過ぎましたが、改めて養育費を請求したいと思います。これからの養育費については請求もできるかと思いますが、今までの9年間分の養育費についての請求は出来るのでしょうか?

(40代:女性)

A.

 養育費とは子が親に対して有している債権ですが、その支払を受けるためにはそれが具体化している必要があります。養育費の具体化は、まずは父母の協議に委ねられており、協議が調わない場合には家庭裁判所(調停および審判)によって定められます(民法766条同879条家審9条1項乙類4号)。では、離婚の際に養育費を請求したとのことですが、その時、あなたと元夫の間には養育費についての具体的取決めがあったのでしょうか?「過去の養育費を請求できるか」というご質問にお答えする上でこの点は重大なポイントですので、取決めがなかった場合とあった場合に分けて検討致します。

(1)離婚に際し、養育費についての取決めがなかった場合

この場合、今になって養育費の具体化を要求できるのかが問題となりえますが、抽象的意味での養育費のように一定の親族関係に基づいて法律上当然に生じる債権民法877条)は、その親族関係が存在する限り時効にかかりません。したがって、9年経った今からでも養育費の具体化を要求することはできます。そこで、まずは養育費を具体化させるべく、元夫と協議をもたれるべきかと思われます。ただ、9年前に物別れに終わっているわけですから、今になって協議が調う可能性は低いでしょう。その場合には、家庭裁判所に申立てをすることによって養育費を具体化させる必要があります。
では、養育費が具体化した後、それまでの養育費も遡って請求できるのでしょうか?判例には、「未成熟子に対する生活保持の義務は、請求をまってはじめて発生するものではない」として申立以前の養育費についても支払義務を認めたものがあります(神戸家審S37.11.5)。しかし、従来の一般的見解は「請求してはじめて要扶養者になる」と考えており、これに従って請求以前の扶養料支払義務を否定する判例も多くあります。そのため、この場合の過去の養育費請求については調停委員または裁判官がお子さんの年齢や相手方やあなたの経済状況などの具体的状況に即して判断する事項と言えますので、「遡って請求できる」とも「請求できない」とも断定することはできません。

(2)離婚に際し、養育費が具体化されているにもかかわらず支払いを拒否されていた場合

当事者間の協議で養育費について具体的な取決めをした場合、その取決めによって(1)で述べた抽象的な意味での養育費債権は具体的な養育費債権(例えば、「子が成人するまでの毎月末、養育費として5万円を支払う」という債権)となり、最初の弁済期から20年間または最後の弁済期から10年間行使しないときは時効消滅することになります(民法168条)。また、この具体的な養育費債権から生じる月々の養育費支払請求権も5年間行使しないことによって時効消滅することになります(民法169条)。一方、家庭裁判所により審判ないし調停において養育費が具体化した場合には、10年の消滅時効に服すことになります(同174条の2)。
以上から、離婚に際してすでに養育費が具体化していた場合には、それがあなたと元夫との私的な協議によるものならば、元夫が時効を援用することにより、過去5年以前の養育費支払請求権は時効消滅することになります。一方、家庭裁判所の調停ないし審判によるものならば、過去9年間の養育費支払請求権は時効にかかっていませんので、全額請求することができます。


更新 2007年11月28日
      

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