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うつ病の夫が暴力を振るうようになり、離婚を考えています

Q.

うつ病の夫が暴力を振るうようになり、離婚を考えています。

 結婚して1年が経ちますが、結婚当初より夫がうつ病を患うようになりました。何度か休職と復職を繰り返しましたが、最近は復職する準備もすることなく家で一日中パソコンと向き合っていたり、旅行に行ったりしています。

 ずっと私の稼ぎだけで暮らす非常に苦しい生活が続いたので、さすがに限界となり、夫にお小遣いを減らすと告げると、突然暴力を振るわれ、全身が痣だらけになる程殴られました。その時に衝動的に家を飛び出し、現在は実家に避難していますが、離婚をしたいと考えています。医者の診断では依然として「うつ病」となっていますが、この場合、正式に離婚は受理されるのでしょうか。また慰謝料はどのくらいが妥当でしょうか。

(20代:女性)

A.

 夫婦間の話し合いによる「協議上の離婚」(民法763条)や調停委員が仲裁する「調停離婚」では、双方が合意する限り、離婚の理由のいかんを問いません。
よって、まずは話し合いによる協議離婚を試みて、それが出来ないときは家庭裁判所に家事調停を申し立てて調停離婚をすることになると考えられます。離婚届にも、離婚理由を記入する欄はないので、離婚届は正式に受理されます。

 しかし、当事者間の話し合いや調停で離婚がまとまらず、「裁判上の離婚」(民法770条)となった場合は、民法で定める離婚事由が必要となります。
  日本の民法は、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」に離婚を認めています(770条1項4号)。ここでいう「強度の精神病」とは、夫婦の同居・協力・扶助という結婚生活の本質的な義務が果たせない程度の精神病をいい、うつ病は「精神病」に該当する場合があると考えられます。
  「回復の見込みがない」かどうかは、専門の精神科医の鑑定を参考にして、裁判所が判断を下すことになります。
  もっとも、裁判所は精神病による離婚を認めることに消極的で、病者の今後の療養生活等について、できるかぎりの具体的方策を講じ、ある程度、前途にその方策の見込みのついた上でなければ、離婚の請求は許すべきではないという姿勢です。
  あなたの場合、夫のうつ病がここ1年ほどという比較的短期間であることや、夫が現在無職で、療養費などもあなたの稼ぎに頼っていることからすれば、精神病による離婚が認められるのは難しいかもしれません。

 次に、精神病による離婚が認められないとしても、うつ病を原因とした暴力などにより「婚姻を継続し難い重大な事由がある」(民法770条5号)として離婚が認められるかが問題となります。
  この定義は幅広く、特に限定されているわけではありません。
  配偶者に対する暴力や虐待の場合、暴力が一過性のものではなく常習的なものであるようなら、離婚が認められると考えられます。
  詳しい事情は分かりませんが、普段から粗暴な夫というわけではなく、あなたが夫から受けた暴力が夫婦喧嘩の成り行き上の突発的なものであるとするならば、離婚が認められるのは難しいかもしれません。

 また、配偶者の生活能力が著しく低く、怠惰な生活を原因として夫婦間の信頼関係が崩壊し、婚姻関係が破綻してしまっていると認められる場合は、その程度に応じて離婚が認められることがあります。
  しかし、あなたの場合は、夫が無職であって生活能力が著しく低いとしても、うつ病を患っていることからすれば「怠惰」であるとまではいえないとも考えられ、これも難しいかもしれません。

よって、現時点では、裁判上の離婚は認められにくいと考えられますので、どうしても離婚がしたいようであれば、当事者間の話し合いによるか、調停によることが望ましいといえます。
なお、慰謝料は婚姻関係を破綻に至らせた配偶者に対して請求できるもので、あなたの場合のように、どちらか一方に責任があるというものでない(あるいは双方に責任がある)場合には、慰謝料は発生しないこともあります。ただ、「解決金」などの名目でお金がやり取りされることがあります。
また、慰謝料には明確な算定方法や算定基準はありませんので、やはり当事者間の話し合い、あるいは調停によるところが大きいといえます。


更新 2009年4月14日

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