離婚したい人も、離婚したくない人も、知ればきっと役に立つ

過去の夫の不貞行為を理由に離婚できる?

Q.

 今年2月ごろ、主人の不倫が発覚しました。相手に会ったり、やはり許すつもりになったり、いろいろありました。
 現在、日常生活は以前と同じように送っていますが、愛情は冷め切ってしまいました。離婚を考えていますが、子どもが主人にとてもなついていますし、主人も子どもと別れての生活は無理なようなので、今のところ以前のままの生活をしています。
 子供の進学の事など考えると、離婚をするとしても2~3年先になりそうです。そのころでも、不貞行為を理由に慰謝料請求して離婚できるのでしょうか?

(40代:女性)

A.

 不貞行為は、民法770条1項1号の規定により、離婚原因となっています。不貞行為とは、肉体関係を伴った行為のことです。肉体関係を伴った行為なら、売春目的の相手でも、一度きりでも、同規定にいう不貞行為にあたります。
 しかし、民法770条1項が定める離婚原因の中で、不貞行為ほど「一般的」なものはないのではないでしょうか。長い夫婦生活の間には、精神的にも肉体的にも不安定な状態になることがあります。普段は良き夫、妻であったが、「魔がさして」ついふらふらと浮気してしまった、ということもあるでしょう。このような場合に、相手の行為を一度は許し、夫婦生活を維持しようとするのは、自然な心情だと思われます。

 しかし、その後再び夫婦生活を継続できない状態となったとき、過去の不貞行為を理由に離婚請求することはできるのでしょうか。
 この点、妻が不貞行為をしたが、その後の話し合いで妻に反省の気持ちが認められたため、夫婦生活も復活し、半年ほど平穏な状態が続いたが、夫が猜疑心を募らせることが常となったため、妻も夫の態度に嫌気がさして家を出、ついに離婚請求するに至ったという事案で、「相手方配偶者が右不貞行為を宥恕したときは、その不貞行為を理由に有責性を主張することは宥恕と矛盾し、信義則上許されない」と判断した高裁判決があります(東京高裁平成4年12月24日判決)。
 この判断に従えば、一旦ご主人の不貞行為を許し、通常の夫婦生活を送りながら、再び過去の不貞行為を理由に離婚請求することは認められない、ということになります。もちろん、2月の発覚以来、不貞行為を許すような言動を取らず、夫婦生活も復活していないような場合には、そもそも「宥恕して」いないのですから、この限りではありません。

 しかし、同判決はまた、その後の夫婦関係が回復し難いほどに破綻し、民法770条1項5号にいう「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するような場合には、破綻について主な責任があるとはいえない一方配偶者からの離婚請求を認めています。
 したがって、「愛情は冷め切ってしまった」という破綻が、民法770条1項5号に該当するような状態に立ち至っている場合には、それを理由とする離婚請求が認められる余地がある、ということになります。
 ところで、民法770条1項5号に該当するような場合であるか否かは、夫婦の生活の実情、破綻の程度、それに至る過程などから、総合的に判断されます。民法770条1項1~4号による場合より、判断基準は総じて厳しくなるといえます。したがって、一方が「破綻した」と感じていても、裁判上の離婚原因となる状態と認められるとは限りません。

 しかし、お互いが話し合い、夫婦関係を解消しようと結論すること(協議離婚民法763条)に裁判所が介入することはありませんから、協議離婚によるならば、2~3年先に離婚することも可能です。また、現時点で夫婦は離婚するが、子どもの生活、教育、監護等については話し合いの上一定の取り決めをする、という方法を取ることも考えられます。


更新 2005年8月29日
      

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