離婚したい人も、離婚したくない人も、知ればきっと役に立つ

親権を実弟に託せるか?

Q.

 妻の浮気が原因で離婚する事になりました。子供の親権は私がとるという合意のもとです。 ただ、子供が未就学児のため離婚日を三年後に決めています。そこで質問なのですが、離婚期日までに不慮の事故で私が死んでしまった時の為に私の実弟に親権を託す旨の、妻の念書と私の遺言書を作成したいと思うのですが、このような事は可能なのでしょうか? 離婚、親権、遺産についての取り決めは全て妻の同意の元で行う事が可能です。

(30代:男性)

A.

 母の親権管理権の喪失を申し立てたり、母に親権や管理権を辞退させれば、あなたの遺言で弟さんを未成年後見人に指定することができます。

 実子の親権者となれるのは、父母の両方か、父または母に限られています(民法818条1項、3項)。また、父母の婚姻中は、父母が共同して親権を行使するとされています(818条3項)。ご相談の場合は、離婚するのが3年後なので、それまでは父母が共同して親権を行使しなければなりません。
 離婚するまでの間に、どうしても母に親権を行使してほしくないと考えるのであれば、家庭裁判所に母の親権を喪失するよう請求することは可能です(834条)。
 もっとも、これは親権者が親権を濫用したり、著しい不行跡(素行不良)があり、子の利益が害されると考えられる場合に、子の親族らの請求により家庭裁判所が宣告するものなので、申し立てが却下される例も多いようです。
 また、母が親権を辞退する方法(837条1項)もありますが、「やむを得ない事由」の存在と、家庭裁判所の許可が必要です。親権は子の成長発達を保障する親の義務でもあるため、親の勝手な都合による辞任は認められませんし、親権者が他者からの圧力によって辞任を強いられてはならないことから、家庭裁判所の許可が必要とされています。

 これらの方法で母の親権を失わせない限り、離婚するまでは父母の共同親権に服するので、それまでに仮にあなたが死亡してしまった場合には、母がそのまま親権を単独行使することになるでしょう。
 他方、離婚までの間に母の親権を失わせてあなたの単独親権となった場合で、その後にあなたが死亡してしまったときは、当然にもう一方の親である母に親権が移るわけではありません。原則として「未成年後見」が開始します(838条)。未成年後見は、親権の補充的役割を果たすもので、親権と同様に身上監護と財産管理との2つの役割を果たします。
 ただ、実際の審判では、生存する一方の親が未成年後見人となるケースが多いようですし、戸籍実務上の取扱いでは、未成年後見開始の審判よりも、生存するもう一方の親を親権者とする「親権者変更の審判」を優先する傾向にあるようです。

 そのため、あなたが弟さんに未成年後見人になってもらいたいと考えるのであれば、遺言で未成年後見人を実弟にする旨を指定しておくことが必要です(839条)。この未成年後見人の指定がなされなかった場合は、子やその親族など利害関係人の請求により、家庭裁判所が未成年後見人を選定します(840条)。

 弟さんに親権を委ねる他の方法としては、あなたの死後、妻が単独親権者となった場合に、お子さんを弟さんの養子にすることが考えられます。この場合、親権は妻から養親である弟さんに移ることになります(818条2項)。ただ、お子さんが未成年であるうちに養子とするには、家庭裁判所の許可が必要です(798条)。
 この方法は、関係する当事者が養子縁組に前向きでなければ実行できないため、現実にはなかなか難しいといえるでしょう。


更新 2010年11月17日
      

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