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別居中の夫のマンションに勝手に入るのは不法侵入?

Q.

結婚9年目です。3ヶ月前、夫が「別居したい」と出て行きました。原因は、性格の不一致だそうです。
新しい住所を教えてくれなかったので、週末に子供に会いに帰宅した際、携帯メールを調べました。すると、浮気していることが判明しました。
その後、長期出張のため荷物を取りに来たとき、マンションの鍵を忘れていきました。それを使ってマンションに入ったら、不法侵入になるでしょうか。
また、そこで浮気の物的証拠を得られたとしたら、証拠として有効でしょうか。

(30代:女性)

A.

 不法侵入は、刑法上の住居侵入罪130条前段)にあたります。
 刑法の罪には、それぞれ、その罪によって保護されるべき利益があります。これを保護法益といいます。つまり、罪は、ある法益を保護するために規定されたものなのです。
 そこで、ある行為が刑法上の罪にあたるか否かを判断するには、その罪によってどのような法益が守られようとしたのかを考えると、答えが出ることがあります。

 では、住居侵入罪の保護法益は何でしょうか。
これについてはいくつかの説があります。代表的なのは、(1)住んでいる人が「誰を自分の家に立ち入らせるか」を決定する権利を保護法益としたのだ、という説と、(2)住居の平穏が保護法益なのだ、という説です。
 たしかに、勝手に人の住居に立ち入ることは、住んでいる人の意思を無視していますし、また、無断で入られたりしては安心して暮らせません。両説は、いずれももっともな点があります。
 
そこで、二つの説から本件を考えてみましょう。
夫婦が何のいさかいもなく同居している場合には、一方の留守の間に他方が家に立ち入っても、何の問題もありません。
 しかし、一方が別居のために出て行ってから3ヶ月が経過し、しかも新しい住居を教えようとしないような場合には、法律上は夫婦といえども、新しい住居に他方を立ち入らせたくないという意思があると考えられます。しかもそれは、他方に明確になっています。
 したがって、(1)住居権者の意思に反して立ち入った行為として、住居侵入罪にあたります。

 次に、鍵が手元にあるとしても、それは彼が偶然忘れていったものです。「自分が留守のときはこれで入ってくれ」と言って渡されたものではありません。そこで、その鍵を使って相手の留守に立ち入る行為は、たとえ「玄関の鍵を開けて入る」という通常の態様でなされたとしても、(2)他人の住居の平穏を害していることになります。
したがって、やはり、住居侵入罪にあたるといわざるをえません。浮気の証拠を探すためだとしても、この行為を正当化することはできません。

さらに、留守宅に入って物を持ち出す行為は、窃盗にもなることに注意してください(刑法235条)。
ただ、窃盗罪で予定されているのは有形物を窃取する行為なので、パソコンのデータなど無形の情報だけを持ち出しても、窃盗にはなりません。

では、このような不法な行為によって得た証拠を、裁判で提出することができるでしょうか。
民事訴訟では、刑事訴訟と異なって証拠に特別の制限はないとされているため、違法に収集された証拠も、裁判で調べてもらえないとは言い切れません。
しかし、裁判官が「この証拠を原告はどうやって入手したのか」と考えたとき、あなたに有利な心証を持つ可能性は大変低いでしょう。
証拠は真正なものだとしても、「住居侵入までするとは人格的に破綻した女性だ。別居したいという夫の言い分には理由がある」と考えるかもしれないし、「でっち上げた証拠なのではないか」と考えるかもしれないのです。
不貞の証拠は別の方法によって収集するべきであり、違法行為によって取得してはなりません。


更新 2007年12月12日
      

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