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妻帯者と不倫。肉体関係が無くても慰謝料を払う必要はある?

Q.

 結婚している人と恋愛関係になりました。彼の妻が私たちの関係を知り、慰謝料を請求するといっています。
 でも、私たちはキスをしたことはあっても、肉体関係はありません。また、以前から二人の間には離婚の話があったようです。
 このような場合でも、慰謝料を支払わなければならないのでしょうか。

(30代:女性)

A.

 既婚者と恋愛関係になり、相手の配偶者が慰謝料請求をしてきた場合、それが裁判において認められるかは、二人の交際の程度、深さによって決まります。
そして、結論から言えば、肉体関係がない場合には、他に特別の事情がない限り、慰謝料請求が認められることはほとんどないと考えていいでしょう。
もちろん、裁判ではなく、当事者が話し合って「慰謝料を○○円支払え」「支払う」と決めた場合には、この限りではありません。
 
 慰謝料とは、相手の精神的損害に対する賠償のことです。
では、恋愛相手の妻が「精神的に傷ついた」と主張しさえすれば、それに対して賠償金を支払わなければならないのでしょうか。
たしかに、既婚者と恋愛関係に陥ることは倫理的に誉められた行為ではありません。しかし、「慰謝料を支払わなければならないような権利侵害が行われたか否か」を決する基準となるのは、直接的には倫理ではありません。
民事訴訟を提起することによって侵害された権利の満足を得ようとする限り、慰謝料を請求する側が「自己の権利が侵害された事実」を、民事訴訟のルールに則って主張立証する必要があります。その場合には、請求者が金額も示さなければなりません。相手が具体的に何か言ってくるまで、あなたの方から行動を起こす必要はありません。
そして、そのような権利侵害があったか、また、示された金額が妥当かどうかは、請求者が提出した証拠などを調べて、裁判所が決めます。

妻の主張として想定されるのは、「夫婦関係を破綻させた」という不法行為民法709条)に基づく損害賠償請求です。では、どのような場合に「夫婦関係が破綻した」といえるのでしょうか。
たとえば、ある妻にとっては、夫が毎日家で夕食を食べることが、何より大切なことかもしれません。「他の女と楽しそうに食事するなんて、私に対する裏切りだ」とさえ思えるかもしれません。しかし、それを他人に主張して、慰謝料を請求することはできません。「食事を一緒にする」という基準は、裁判で認められる「破綻」の基準とはならない、ということなのです。
最近よくあるのは、「メル友」についての相談です。妻(あるいは夫)が、異性とセクシュアルなメールを頻繁にやり取りしている。これは不倫ではないのか、相手に慰謝料を請求したい、というのですが、これだけでは無理というしかありません。

そこで、法律的に「夫婦」というものをとらえる必要が出てきます。つまり、婚姻関係にある者は、お互いにどのような権利を有し義務を負うか、ということです。
この点について、法律には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」(民法752条)という規定があるだけです。
しかし、民法は、裁判上の離婚原因として「配偶者に不貞な行為があったとき」という規定も設けています(民法770条1項1号)。この「不貞な行為」とは、「異性と肉体関係を持つこと」と解釈されています。そこで、肉体関係に至らない交際である限り、それだけで離婚を請求されることはない、ということになります。
もちろん、「夫婦関係が破綻したことを原因とする慰謝料請求の可否」の基準として、「裁判で離婚が認められるか」という基準がそのまま適用されるわけではありません。
しかし、その程度までに至っていなければ「法律問題」というまな板には乗らない、という意味では、共通のものがあると考えられるのです。

なお、交際が始まる前から夫婦関係が破綻していた場合には、当然あなたの責任はなくなります。これを「破綻の抗弁」といいます。ただ、その事実は、あなたが証明しなければなりません。


更新 2007年7月19日
      

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